パリ いつもと違う奇妙な8月 コロナ渦でも万全の感染防止対策で観光客を迎える
例年、8月のパリは住民たちはバカンスに出掛けてパリからいなくなる一方、観光スポットは外国人観光客で混み合います。
しかし今年はコロナ渦で外国人観光客が激減。パリはそれに負けることなく、感染防止措置をしっかりと講じつつ例年通りイベントを開催し観光客に対応しているという、8月3日のfrance24.comの記事を訳してみました。
きっとどこも空いているんだろうな。感染防止対策もしっかりとられていることだし。この夏のパリ観光、狙い目なのかも。
パリに行きたくなりました。
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パリ いつもと違う奇妙な8月 コロナ渦でも万全の感染防止対策で観光客を迎える
2020 年のパリの夏は後々歴史の1ページを飾る、マスクとアルコール消毒液の夏として思い出されることだろう。また、外国人観光客が激減した数十年に1度の静かな夏、多くのパリ市民が外国に行く代わりにフランス周辺でバカンスを過ごす夏ともなるだろう。
新型コロナウイルス渦に負けじと、パリは夏を熱く盛り上げようとしている。18年間前から夏のイベントの主役であり続けている「パリ・プラージュ」は今年も開催された。毎年7、8月には、セーヌ河岸の一部と19区にあるラ・ヴィレット貯水池に人工ビーチが作られ、人々は避暑気分を楽しむ。
二つの会場では例年同様、フェンシング、野外ジム、コンサート、水泳、足こぎボート、ペタンクといったあらゆるアクティビティが開催されており、軽食や飲み物の屋台が並び、暑苦しいパリに取り残されたパリジャンたちにひと時の避暑を提供している。
7月18日にはイベント開催を記念して、「Le Cinéma sur l'eau(水上映画館)」も開かれた。参加者は38艘の電動ボートのひとつに乗り映画を楽しんだ。それぞれのボートではグループ利用は6人までに制限された。
徹底した感染防止対策がとられ、計画的かつ定期的に清掃と消毒が行われ、両会場とも入場人数が制限されている。
夏のパリではもはや当たり前となっているのが行列だが、ありがたいことに今年はそれがない。エッフェル塔の入口に到達するまで猛暑の中で数時間並ぶ、なんてことを今年は心配しなくてすむ。ほとんどの観光スポットと同様に、エッフェル塔では事前にネットで時間指定をしてチケットを購入することが可能だ。
一連の感染防止措置もとられている。11歳以上のすべての見学者はマスク着用が義務化され、上りと下りのルートは決められている。また、30カ所に消毒アルコールが設置され、見学者数も大幅に制限されている。当初は1階と2階のみ入場が許可されたが、7月15日からは最上階までオープンとなった(ただしエレベーター使用のみ)。
同じような対策はベルサイユ宮殿でもとられている。見学者は歓迎されるが、事前にネットで予約しマスクを持参しなくてはならない。現地でマスクは購入はできない。宮殿と庭園の大部分はオープンしているが、見学者は決められたルートに沿って進み、1メートル以上の間隔を空けなくてはならない。
パリ市一丸での取り組み
パリ市全体で観光客の安全対策に取り組んでいる。パリのバス、トラム、メトロ、RER等の日々の交通網を提供するRATP(パリ交通公団)は、必要な物理的距離を保ちつつもサービスのレベルを落とさないよう、厳格な安全対策を講じている。利用者にはマスク着用が義務付けられ、違反すれば135ユーロの罰金が科せられる可能性がある。
パリ観光局は6月、観光従事者に向け新たな誓約憲章「思いやりの心構え」をスタートさせた。これには、健康対策の実施や、そのための従業員の訓練、社会的距離を確保したサービスの採用といった一連の共通ルールが定められている。
「話し合いを重ねた結果、協力して解決策を見いだすことができた。バーチャルツアーを通じて訪問客にパリを紹介し続けるために、多くの施策がとられている」と、パリ観光局の局長コリーヌ・メネゴー氏はFRANCE 24に語った。
「安心してパリを訪れてもらえるようにすることが不可欠だ。パリのすべての観光従事者が、観光客の安全を確保するために必要な衛生環境の整備に取り組んだ」
カルチャーイベントも多く開催
パリでは様々な予防対策がとられてはいるが、観光客や住民にとっての朗報はカルチャーイベントの数が大幅に削減されていないことだ。むしろこの夏は、例年より観客動員数が減ったとしても、人々にとって安全なイベントになるようやり方を工夫している。
「アンヴァリッドの夜(Nuit aux Invalides)」 は過去8年間、パリの代表的な光のショーのひとつである。2020年の開催は心配されたが、アンヴァリッドの中庭で毎晩開かれている。この音と光の3Dのショーの今年のテーマは、パリ最大の歴史的建造物アンヴァリッドの350年の歴史探求である。来場者はマスク着用と手のアルコール消毒が義務づけられ、指定された方向に絶えず進み続けなくてはならない。
この夏、人気のあるもう一つの光のアトラクションは、「アトリエ・デ・リュミエール(L’Atelier des Lumières)」だ。現在2つの展覧会が開催中で、モネ、ルノワール、シャガールの芸術世界に浸ったり、「イヴ・クラインの無限の青」展で青色を探求することができる。アトリエでは、11歳以上のマスク着用、グループでの入場禁止、1メートル以上の距離確保などの安全対策が取られている。
今週、最初の熱波が到来し、パリの8月は暑くなりそうだ。パリの楽しみの一つはセーヌ川右岸のジョセフィン・ベイカーや13区のラ・ビュット・オー・カイユなど数多くの屋外プールがあることだ。どの施設も入場者数の制限や共同更衣室の使用禁止など厳しいルールを導入している。また、プールに入る前は十分に体を洗わなくてはならない。
しかし、暑さから完全に逃れるための最良の方法は、デンフェールロシュルーにある地下納骨堂、カタコンベに降りることだ。通常は長蛇の列に並ばなくてはならないが、今年はネットで時間予約をする必要がある。100段以上の階段を降りると、14℃のうす暗い迷宮に着く。入場者数は厳格にモニターされマスク着用は義務となっている。
ロックダウン後に再開した重要な観光スポットの一つがサクレ・クール寺院だった。この歴史的建造物には毎年1000万人以上が訪れるが、今年の春、パンデミックのために閉鎖を余儀なくされた。最後まで制限されていた地下室とドームもようやく再開されたため、階段を上って遮るもののない素晴らしいパリの景色を堪能できる。
セーヌ川遊覧船大手のバトー・ムッシュ社のマーケティング責任者ギョーム・デュシェヌ氏は次のように話す。「2020年の夏は確かに異例づくめだ。パリの観光事業者は軒並み、外国人観光客が来ないことで大きな損失を被っている。しかし、外国からの旅行客が減った代わりに、パリ住民や地方からのフランス人観光客がそうした落ち込みの一部を補っている」
バトー・ムーシュ社では、ウィークディの乗船者数の制限や運行数削減などの措置をとっている。
「しかし、クルージングの回数を少し増やすことができている。客足は戻ってきている」、とデュシェヌ氏は言う。「パリ住民にとってこの夏は、これまでとは違う角度からパリを再発見する理想的な状況だと言えるだろう」